研究


  1. 線量分布の最適化に関する研究

    当放射線科治療部門の長年のテーマは、時間的・空間的に最適な線量分布の追求である。初代若林教授は、間接作用の生化学的研究に基づき、最適な時間的・空間的(4次元)線量分布を腔内照射法で達成すべく、高線量率遠隔後充填腔内照射を世界で初めて実用化し、小体積であれば、少分割(1回あたりの線量は大)での治療が可能であることが分かり、外来的な腔内照射法が可能となった。30年後の現在、同治療法は世界標準となっている。最適な時間的・空間的線量分布の追求を、第2代入江教授は光子線外照射にて試み、短期少分割放射線治療について1970年代にprospective studyを行い、発表をした。一回線量が高いと、同じ総線量でも脊髄晩期障害の発生率が高いことを導き、短期少分割放射線治療は、照射体積が小さい場合のみ利用可能で、脊髄のような重要臓器は高精度の固定法で可及的に照射線量を下げることが重要であることを示した。照射野内に重要臓器が入ってしまう全骨盤照射などでは、1回線量を上げることはできないことも示した。これに基づき、頭頚部放射線治療での固定具(シェル)の全例への使用を日本で初めて実用化した。1980年代には、CT・MRI画像の普及があり、これを高精度放射線治療のためにいち早く利用可能とし、その実績に基づいて、辻井助教授らが京都大学との共同研究で1987年に放射線治療計画用CT装置を開発した。現在、先進諸国のほとんどすべての治療施設が同様の装置を利用している。最近最も北海道大学医学部放射線治療分野が貢献したのは、1990年初頭から発展してきた脳定位放射線照射である。同治療は、小体積に、少分割で、高精度固定装置を用いて放射線照射する方法で、上記の若林・入江教授の研究テーマの延長上にある。1993年から白土助教授が中心となって、脳定位放射線照射線量装置を開発した。その上で、脳動静脈奇形、脳転移性腫瘍ではガンマナイフと同程度、聴神経鞘腫・脊髄動静脈奇形では分割照射を加えることによって、それ以上の治療成績を挙げ、全国から患者が集まっている。直線加速器を用いた分割定位放射線照射に関しては、国内外からの見学者もあり、研究論文も多くの論文・教科書に引用されている。体幹部の病変に関しては、脳と異なり、呼吸・心拍・腸蠕動などの影響で動きを制御する必要があり、腫瘍の動きに同期させた治療が必要であることが分かっていた。1999年に、白土助教授らは、動体追跡照射装置を企業と共同開発し、0.03秒毎に腫瘍病変の3次元的位置を確認しながら、これが計画された位置に来た瞬間だけ照射することを可能とした。同治療法は国内外で高い評価を受け、注目を集めている。

  2. 放射線生物学的研究

    教室の開設当初の研究は、放射線の間接効果の研究で、放射線が引き起こす説明し難い数々の現象を追求し、細胞生物学の発展を取り入れて、発展してきた。1970年からは動物内に腫瘍を移植し、これに対する放射線の影響を調べることが可能となり、細胞だけではわからなかった生体系の反応を見るべく、全身照射の影響を免疫学的に検討してきた。宮本助手は1980年代に小線量全身照射は腫瘍の成長を遅らせる効果があることを示した。1990年代に入り、我が教室のテーマは分子生物学的手法をいままで解明されなかった放射線生物学に応用することになった。 橋本大学院生が小線量全身照射は、数々の細胞免疫制御因子を誘導することにより、転移を減らす可能性があることを示した。放射線で癌が治った後は、何故か生体は元の形に戻ろうとする。たとえば、”鼻の腫瘍が治ったあとは、鼻の形に戻る”。この現象を追求しているのは、白土助教授グループで、尾松大学院生が、その根本的な機序には形態形成に関与するHOX geneが関与していることを突き止めた。高研究生は、心臓への放射線の影響を検討し、毛細管への微細な影響を分子生物学的に検討した。腫瘍細胞の放射線感受性を調べることは、放射線治療を最適化するために重要な役割を有する。西岡助手らは、分子生物学的手法を腫瘍細胞に適応し、放射線感受性とアポトーシスとの関係を追及した。土屋大学院生は、脳腫瘍における腫瘍抑制遺伝子p53の役割を研究し、脳Glioblastomaではapoptosisは放射線感受性との関係が薄く、G0期でのirreversible arrestが強く関与していることが示唆された。

  3. 情報の電子化

    治療患者の情報の電子化は、入江教授が1970年代から世界に先立って始めたことである。その理念は今に引き継がれ、1970年から30年間、放射線治療患者の治療内容、治療結果、生存期間などをデータベースに保存し、患者生存率解析に役立っている。1980年からは、患者の画像情報もすべて電子保管されるようになり、現在は院内での治療を行った全患者の治療計画用CT/MRI/照合写真が電子管理・保存されている。これにより、多種画像を用いて腫瘍の形態だけでなく活動度も含めた情報によって線量決定を可能とした。さらに、1998年からは宮坂教授・白土助教授の研究で、他院での放射線治療患者へのコンサルテーションを電子化された情報・画像を用いて行っている。国内3個所、韓国1個所との遠隔放射線治療計画が可能となり、緊急放射線治療により、寝たきりになる可能性のあった脊髄麻痺患者の90%歩行可能とし、国内外の注目を集めている。また、病棟内の看護婦業務の簡易化のために、看護支援システムを開発した。これは1980年代から試行錯誤を繰り返しながら、1997年には病院情報システムと連動し、最も成功した例として国内外から注目され、1998年からは全病院規模の看護支援システムに発展した。

  4. 機能画像の放射線治療計画への利用

    西岡 健らは、核医学講座の塚本江利子先生らのご協力を得て、頭頚部腫瘍におけるFDG?PETを放射線治療計画に用いる研究を進めており、国際学会で高い評価を得ている。青山らは、脳神経外科の鎌田恭輔先生らのご協力を得て、脳磁図や機能MRI画像を用いた放射線治療計画を行っている。これらは今後の放射線治療の発展するべき方向を示しており、米国を中心とした学会にて国内外をリードするデータを発表しつつある。

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