強度変調放射線治療IMRT

 

強度変調放射線治療(IMRT)とは

“強度変調放射線治療(IMRT)”は、当院において先進医療の承認を受けた治療法です(国内初承認)。
癌に対する放射線治療では、一般的に腫瘍に対して放射線をたくさん照射するほど腫瘍制御率が高くなります。しかし、照射量が多くなると正常の組織に対する副作用が起こりやすくなります。
このため、正常の組織に対する耐用線量(これ以上照射すると取り返しのつかない合併症が起こる線量)を超えて照射を行うことは困難とされています。
しかし、”強度変調放射線治療”では、病変の形状に合わせて放射線を照射することができるため、正常組織への影響を最小限にしながら、従来よりも多くの放射線を腫瘍に照射することができます。

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頭頸部癌に対する放射線治療

従来の治療では、唾液を出す”耳下腺”という組織に腫瘍と同量の放射線が照射されてしまい、機能低下が避けられませんでした。このため、治療後に大半の方が口渇や味覚障害を自覚されます。耳下腺機能を回復するには、長い時間がかかり完全に回復しないことも希ではありません。
“強度変調放射線治療”では、耳下腺へ照射される線量を低く抑えることができ、機能低下を最小限に留めることが可能です。したがって、従来の治療に比べて口渇の程度を抑えることが期待されています。
また、従来は脊髄や視神経といった重要臓器を避けるために、腫瘍の根治に必要な放射線量を照射できないことがありましたが、”強度変調放射線治療”では重要臓器を避けながら、腫瘍に高い線量を照射することができます。

 

従来の治療(左図)では、耳下腺(←)は黄色の線(95%の線量)の内側にあり、腫瘍(↓)と同等の放射線が照射されています。IMRT(右図)では耳下腺(←)の線量が紫色の線(50%の線量)の外側になっており、腫瘍(↓)の線量の半分以下であることがわかります。

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頭頸部癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の前に

“強度変調放射線治療”は腫瘍とその周囲の組織に照射される放射線量が大きく異なる治療法です。
もし、治療中に位置のずれが起こると、腫瘍に十分な量の放射線が照射されないだけでなく、正常組織に高線量が照射されてしまう可能性があります。したがって、通常の治療よりも高い精度で照射しなければなりません。北海道大学では、患者様の歯に合わせた型(マウスピース)と専用の固定具(マスクシェル+カーボンフレーム)を作製し、その中に埋め込まれた金球を位置あわせの目印として正確な治療(動体追跡照射)を行います。
“強度変調放射線治療”を開始する前に、まず歯型を作製し、それから治療計画を行います。治療の準備には若干のお時間を要しますので、ご了承ください。

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頭頸部癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)に必要な準備

  1. 歯科医師による口腔内の診察
    抜歯や差し歯の金属をはずす処置が必要となることがあります。その上で金球をいれたマウスピースを作製します。
  2. 治療用固定具の作製
    頭部・頸部を固定するためのお面(マスクシェル)と枕(モールド)を患者様に合わせて作製します。
  3. 治療計画用画像(MRI、CT)の撮像
    コンピュータによる治療計画を行うために必要な画像データを取得します。
    患者様ご本人にしていただく準備はここまででおしまいです。
  4. 治療計画の作成
    医師ならびに医学物理士がコンピュータを用いて、IMRTの治療計画を作成します。およそ、1週間程度を必要とします。
  5. 線量測定
    実際の治療を開始する前に、治療計画通りに放射線が照射されるか様々な方法を用いてチェックを行います。
    この作業には1週間程度を必要とします。

上記終了後、強度変調放射線治療の開始となります。
通常、治療計画用画像の撮像から1〜2週間かかります。

 

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前立腺癌に対する放射線治療

従来の前立腺癌に対する放射線治療では、尿道、膀胱、直腸などの正常臓器にも放射線が当たってしまいます。
放射線治療中に生じる副作用として、頻尿や排尿時の違和感や排便時の違和感などが起きる可能性があります。
放射線治療が終了して数ヶ月から数年経過した際に生じる副作用として、直腸粘膜炎や尿道炎などが起きる可能性があります(晩期障害)。
“強度変調放射線治療”により、腫瘍には十分な線量を照射しながら、正常臓器の線量を減少させることで、上記の副作用発生率を低下させたり、症状を軽く済ませることが可能です(表1)。

副作用発生部位 従来の放射線治療 強度変調放射線治療
直腸 15.5%(11/71) 3.3%(3/92)
尿路系 7.0%(5/71) 1.1%(1/92)

表1.副作用発生率(北大病院)

 

従来の治療(左図)では、直腸(↑)は水色の線(80%の線量)の内側にあり、腫瘍と直腸が接する部分(→)には高い線量が照射されます。
強度変調放射線治療では(右図)、直腸(↑)に接するように緑(90%の線量)や水色の線(80%の線量)がへこむように形成されており、直腸に接する部分の線量は従来よりも軽減されることがわかります。

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前立腺癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)に必要な準備

  1. 金マーカーの留置
    泌尿器科に入院し、手術室で金マーカーを挿入します。
  2. 治療計画用画像(MRI,CT)の撮像
    コンピュータによる治療計画を行うために必要な画像データを取得します。
    患者様ご本人にしていただく準備はここまででおしまいです。
  3. 治療計画の作成
    医師ならびに医学物理士がコンピュータを用いて、IMRTの治療計画を作成します。およそ、1週間程度を必要とします。
  4. 線量測定
    実際の治療を開始する前に、治療計画通りに放射線が照射されるか様々な方法を用いてチェックを行います。
    この作業に、通常は1週間程度を必要とします。

上記終了後、強度変調放射線治療の開始となります。

治療は1回あたり20〜30分間寝ているだけで終了し、痛い・熱いなどの症状は特にありません。
月火木金の週4回照射します。通常は30回前後、期間にして約2か月間の治療になります。
短期間の入院は必要ですが、治療中は毎週診察を受けていただくことにより、ほとんどの方は外来通院で治療を完了することが可能です。
治療終了後は、放射線科と泌尿器科の連携により、外来通院にて経過を観察していきます。

 

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肺癌に対する放射線治療

従来の肺癌に対する放射線治療では、肺、心臓、大血管、脊髄などの正常臓器にも放射線が当ってしまいます。
放射線治療中に生じる副作用として、放射線性食堂炎や放射線性肺臓炎などが起こる可能性があります(急性期障害)。
放射線治療が終了して数ヶ月から数年経過した際に生じる副作用として、放射線性肺臓炎、肺線維症、胸膜炎、呼吸機能低下などが起こる可能性があります(晩期障害)。

当院では、”強度変調放射線治療”と当院ですでに実績のある”動体追跡放射線治療”を組み合わせることで、上記の副作用発生率を低下させたり、症状を軽く済ませることを目的とした”4次元強度変調放射線治療”が可能です。

 

従来の治療(左図)では、腫瘍(赤の塗り潰し部分)に十分に放射線をかけるには正常の肺(黒く見える部分)に多くの放射線照射を余儀なくされますが、強度変調放射線治療では腫瘍以外へ照射される線量の低減が可能です。
また、大血管や脊髄へ照射される線量も低く抑えられており、より効果的に、より安全な治療を提供することができます。

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肺癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)に必要な準備

  1. 金マーカーの留置
    各診療科に入院し、経気管支鏡的に金マーカーを挿入します。完結的な操作を伴うため、入院が必要です。
  2. 治療計画用画像(CT、PET)の撮像
    コンピュータにて放射線治療計画作成のためにCTやFDG−PET等の画像検査を施行します。
    患者様ご本人にしていただく準備はここまででおしまいです。
  3. 治療計画の作成
    医師ならびに医学物理士がコンピュータを用いて、IMRTの治療計画を作成します。およそ、1週間程度を必要とします。
  4. 線量測定
    実際の治療を開始する前に、治療計画通りに放射線が照射されるか様々な方法を用いてチェックを行います。
    この作業に、通常は1週間程度を必要とします。

上記終了後、強度変調放射線治療の開始となります。

治療は1回あたり30〜40分間寝ているだけで終了し、痛い・熱いなどの症状は特にありません。
月火水木金の週5回照射します。通常は30〜35回前後、期間にして約2か月間の治療になります。
治療方法の相違によって、治療開始から終了まで入院が必要になることもあります。
治療終了後は、外来通院にて定期的に経過を観察していきます。

 

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強度変調放射線治療(IMRT)の過程

北海道大学病院
各科または放射線外来への紹介

放射線治療チームによるカンファレンス
(紹介料・放射線科医・医学物理士・診療放射線技師)

放射線治療施行日・照射回数の決定

通院治療・放射線科入院・紹介科入院のいずれか最適な方法を決定

病変への金マーカーの埋め込み

強度変調放射線治療の治療計画

強度変調放射線治療施行

北大病院放射線科・各科または紹介元の医療機関での経過観察

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Q&A

Q.どのような疾患が強度変調放射線治療の対象となりますか?

頭頸部癌、前立腺癌、肺癌だけでなく、他の体中のいろいろな疾患にも適用することが可能です。
一般病院・医療機関から北海道大学病院各科または放射線外科外来へ紹介が必要となります。
受診後、それぞれの疾患に関する放射線治療チームがカンファレンスを行い、適応可能かどうかを検討します。

 

Q.一回の治療にかかる時間はどのくらいですか?

初回の治療は位置あわせに時間がかかる為、1時間程度必要とされます。
2回目以降は、20〜30分程度で終わりますが、治療中の動きによって照射時間は多少変わります。

 

Q.入院の必要性はありますか?

対象疾患によって、入院の有無は異なります。
治療終了後、体調が回復した時点で退院となります。治療の内容や年齢にもよりますが、放射線治療が終了してからも2〜3週間程度の期間は入院して頂くことが多いです。
大部分の方は、全体の入院期間が3ヶ月程度となります。

 

Q.照射中の副作用はありますか?

可能な限り、副作用を減らすように治療計画を作成しますが、生じる可能性はあります。
照射中から照射後にかけて起こる主な副作用として、放射線皮膚炎、粘膜炎、口渇があり、場合によっては苦痛を伴います。
このほか、疾患部位の腫瘍の大きさによって、出現する可能性のある副作用が様々にあります。

 

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